< 一服一縁 >
2000年11月15日

僕は一応、編集という仕事をしています。
その仕事の一端には他の人が書いた原稿を校正する、
つまり簡単にいえば、誤字脱字などをチェックすることも入っていて、
文字・日本語については一般の方以上に気をくばる必要があるわけです。
しかし僕はどうもこの作業が以前から嫌いで、不得手でしたが、
今日はっきりと僕がこの作業に失格だということがわかりました。
なんと!自分の名前を三十数年間も間違って書いてたのです。

僕の名前は三枝克之(みえだかつゆき)。
「漢数字の三に、木の枝の枝、克服の克に、之(これ)という字です」
これが僕が自分の名前の漢字を、
他人に口頭で説明するときの常套句だったのですが、
問題は最後の「之(これ)」という字です。
僕はこの字を今の今まで、他人には「之(これ)」と言いながら、
自分ではひらがなの「え」みたいに、二画で書いていたのです。

だいたい僕は、本来日本語を守るべき立場にありながら、
妻に筆順の間違いを指摘されると、
「僕にとっての正しい筆順は、一番早くその字を書ける筆順なの!」
などと、うそぶく非国民で、
筆順や画数といったものには、まるで気をつかってなかったのです。
それが今日、仕事で調べものをするのに漢和辞典をひいていて、
ふと自分の「之」という字にはどんな意味があるのだろうと思い立ち、
二画の項を探してみたところ、「之」が見つかりません。
で、あらためて音訓索引からひいてみると、
「之」は三画になってるじゃないですか?!
もしかしてこの左下の<ヒゲ>みたいなのが曲者??
あわてて、パソコンのキーボードで「之」をたたくと、
どの書体で打っても、しっかり<ヒゲ>がついています。
えっ!?
僕は今度は『天使のカレンダー』やら
『Contemporary Remix “万葉集”』やら、
自分の関わった(当然自分で校正もした)本を
引っぱりだしてチェックしました。
南無・・・・。
すべて<ヒゲ>つき、三画の「之」です。
ああ〜、僕がこれまで何千何万回と書いてきた
自分の名前は何だったのか?!

姓名判断という占いがありますね。
名前の画数で占いをするものです。
僕はあまりそういうことに興味がなくて、
今まで自分から見てもらったことはもちろん、
その手の本を見たことさえないのですが、
36年生きてると、時々親切な方が現われて、
勝手に占ってくれることがあります。
するとだいたい、良いように言ってもらうことが多く、
特に必ず言われたのが「大器晩成型」ということです。
まあ、興味はなくても、そう言われるとそれなりに気になるもので、
いったい「晩成」の「晩」って、いつやろか?
早いこと年をとって「晩」にならんかな〜などと思ってたのですが、
40歳が刻々と近づくのに、一向に「晩成」の兆しさえ見えません。
今思えば、当然ですよね。
自分で間違った名前を書いていて、運気が向くわけはありません。

というわけで、僕は今日、これまでの漢字への不義をわび、
「三枝克え(みえだかつえ)」あらため、
きちんと「之」を三画で書くことで、
真正・新生「三枝克之(みえだかつゆき)」として
生まれ変わることにいたします。
これで僕は晴れて来たるべき
「大器晩成」に向けてまっしぐらです。(???)

何ともバカな話で恐縮です。
ではではまた。
茶を!

三枝克之

あ、
そういえば『天使のカレンダー』にはもうひとり
「之」の字のつく方が・・・。
てらぴかさんは、もちろんきちんと三画で書いてらっしゃるんだろうな〜。

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