< 茶話 >
2000年2月28日

<てらぴかのえんがわ>にお越しのみなさん、こんにちわ。
<えんがわ>に居候している三枝(みえだ)です。
このたび家主のてらぴかさん、管理人のdeepseaさんのご厚意で、
<えんがわ>の離れにある<いおり>をお借りして、
<茶室>として使わせていただくことになりました。
なにぶん散歩好き、旅好きなもので、毎日いるとは限りませんが、
折々に<茶事>を開いて、
僕の見聞したり感じたりした浮世の話、また浮世離れした話など
つれづれなるままに書いていこうと思っています。
<茶室>なのでもちろんお茶ぐらいはご用意し、
お花や掛け軸なども飾りつつ、(あくまでも空想的・気分的にですけど)
みなさんにくつろいでいただける空間にしたいと考えています。
<てらぴかのえんがわ>にお越しの節はぜひ、
離れの<茶室>の方へもときどき足をお運びください。
茶人にはほど遠い人間なので、
つたないお手前をお目にかけることもあるかと思いますが、
どうぞ末永くよろしくお願いします。
これからのみなさんとの<茶室>での一期一会、楽しみにしています。


<茶話その1 千利休>

ま、そんなわけで今日2月28日から、
<茶室 三枝庵>がスタートしたのですが、
実はこの2月28日は茶の湯の天才・千利休の命日(旧暦ですが)でもあります。
そんな縁日に<茶室>をオープンするとは、なんと幸せなことでしょう。
今日はやはり、菜の花を生け、お抹茶をすすりつつ、
利休の心を偲ばないわけにはいけません。

京都に住んでいるとはいえ、まるで「茶道」とは縁のなかった僕に、
どういうわけか昨年末から「茶の本」の企画が舞い込んできて、
このところ茶道関係の本を片っ端から読んでいます。
で、どうかというと、
相変わらず現代の「茶道」にはほとんど興味を持てないのですが、
その祖・千利休という人物に関してはじつに心惹かれています。
赤瀬川原平さんも似たような視点で書かれてますが、
この人、おそらくは日本の歴史上最高の
アートディレクターであり、アートパフォーマーであることは間違いない。
その思想、芸術性などをここで一口に語ることは出来ませんが、
彼の仕事や言葉などには、本や作品を作るにあたってのヒントがたくさんつまってます。
最近は企画が煮詰まったり、編集の方向に迷ったりすると
「利休ならどうするか?」などと自問自答することにしています。
まるで一種のおまじない状態になりつつあります。

「茶の湯とはただ湯を沸かし茶を点てて飲むばかりなるものとしるべし」
この利休の言葉も実に使える言葉です。
画家なら
「絵画とはただ物を見て画布を置き描くばかりなるものとしるべし」、
野球選手なら
「野球とはただ球を投げバットで打ち遊ぶばかりなるものとしるべし」、
といったふうに応用すれば、なんか奥義に近付けそうな気がしてきます。

そのスケールといいセンスといい、
現代において彼と並ぶ才能をもつ人物はあまり思い浮かびませんが、
建築家の安藤忠雄さんには少し「利休」が入ってるような気がしています。
(そういえば、自分の美を守るためには切腹さえしかねない殺気も感じますね。)
そのあたりを僕の「茶の本」企画のポイントにできないかと、
現在密かにあたためているところです。
(あ、ここに書いてたら、もう密かじゃないですね)
もうすぐ淡路島で花博が開催されますが、
メイン会場となる安藤忠雄さんの建築はやはり楽しみ。
ぜひ早いうちに見に行きたいと思ってます。

今日のところはこんな感じで、お開きです。
どうもお粗末様でした。
それではまた近々に。

2000年2月28日
三枝克之

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