Today's Terapika寺門孝之です。

Back Number 20020319

 

 2002年3月19日、火曜、晴れ。

 いよいよ本当にラストスパートの時期で、いつもならば狂気じみて家族や周囲の人に迷惑がかかってくる頃なのですが、今回は割と平静、穏やかな日々です。

 これにはわけがあって、今僕が夢中になって描きつづけている『闇の妹(略してヤミイモ)』のシリーズは1点を仕上げるのにいたって時間がかかるのです。以前の天使などを描く際には気合一発でかなりの瞬間芸、限られた時間での量産も可能でしたが、「闇妹」ちゃんはなにせ主役が背景の「闇」なもので、その闇を深く、気色良くするのにどうしても何度も何度も塗っては乾かししなくてはなりません。

 また闇の妹が絵に登場するためには、大きな木、だとか、岩、だとかなにか寄り代(ヨリシロ)になるものが必要で、それが生気を醸し出すまで描くのにも時間を吸い取られます。

 さらに闇妹登場後、その他に何がこの画面に登場して来るのか、ぢっと自製の闇を見詰めて、待たなくてはなりません。時間があっという間に食い尽くされてしまうのです。

 だから今回は大分前からもうカンネンしてしまって、数は諦めました。そのかわり、今のところシリーズ新作は5点の予定ですが、ぢ〜っと見詰めていても飽きないような絵に仕上がるようにがんばります。(あ、もちろん「闇」以外の新作もたくさんありますよ! ご安心を!)

 さて、その「闇の妹」シリーズの中で今回、また新しい試みとして、絵の中に文字を入れてみました。ここしばらく自分の絵の中に文字を入れるのはご法度にしてきたのですが、またまた自作掟破りです。

 で、何が書いてあるかと言うと、自作の「詩」です。かねてからここでも、僕が自作の詩を読むバンド=PIG'S HEADについて何度も触れたと思いますが、今回はそのレパートリーを「絵」にしてみています。

 本来、なぜ詩を朗読したりし始めたかというと、多分、僕に降りてくるイメージの中で「絵」に出来ない(技術的なことも多分にあって)世界をとりあえず言葉にして、声にして、音曲にしてこの世に実現しようとしていたのだと思います。それがここへきて、「闇の妹」の登場とともに、これまで言葉にしかできなかったものが、ようやく「絵」になりかけてきたような気がするのです。

 そんな折も折、朗読の方は周防義和音楽監督のもと、レコーデイング、トラックダウンも終了し、今回の展覧会でなんとパイロット盤CDを発売します。録音完了の11曲から「貝太郎」「チキン・ビヨンド」「雨とじゅじゅ」「PIG'S HEADのテーマ」の4曲を収録。周防監督みずからの手で焼いた手焼きCD。100枚限定エディションナンバー入り。寺門自らの手書きデザイン盤面。さらに周防氏と寺門の自筆サインが入って、定価500円+税。どうです? 破格でしょう? デフレでしょう? 全国の少数PIG'S HEADファンの皆さん、ぜひご入手を!

 で、会場にはCD収録の「貝太郎」「チキン・ビヨンド」「雨とじゅじゅ」「PIG'S HEADのテーマ」を描いた「絵」が展示されてある、という趣向。ちなみに今回のDMは「貝太郎」の絵画バージョンです。今日は「チキン・ビヨンド」が仕上がって、「雨とじゅじゅ」を深めているところ。ああ、搬出までに「テーマ」まで描き切れるかな?

 アトリエには映画「マルホランド・ドライブ」のサウンドトラック盤が鳴っています。観て来ました。最高… あんな風に「絵」を描きたい。

 ようし! 絵に戻ります。

 寺門孝之

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