Today's Terapika寺門孝之です。

Back Number 20021121

 

 2002年11月21日、木曜、晴れ。

 外には満々の月があかあかと照ってます。乱視を矯正し切れてない僕の眼鏡越しには、ここ数日ずっと満月に見えてて豪奢。

 ところで、僕がポールの歌に酔っていた頃、ジェームズ・コバーン氏が月へ還って逝かれました。享年74歳。昨日の朝刊の記事によると、自宅で夫人と音楽を聴いていた際、心臓発作で。

 それを読んでまたまた僕の妄想が猛スピードで走ります。

 ジェームズ・コバーン氏は夫人と自宅で、ポール・マッカートニーのアメリカ・ツアー「BACK IN THE US」のVTRを鑑賞中、感動の余り発作に襲われたに違いありません。その瞬間の曲目は“BAND ON THE RUN”のはず! あるいは“007 死ぬのは奴らだ”かも。

 ジェームズ・コバーンは小・中学生時代の僕の憧れの人でした。TVの洋画劇場で観た「大脱走」や「荒野の七人」。個性の強い男たちの群像劇の中にあって、無口で飄々としていながらなんとも頼りになりそうな「大人の男」。針金みたいな細長く、しなる肉体。白髪みたいに輝く髪。ナイフで刻んだような相貌の鋭い線。それほどの歳でもなっかただろうに、なんだか老人のように渋くて賢こそうなジェームズ・コバーンは子供心に僕にとって「男の中の男」でした。

 なので、ポール・マッカトニーとウィングスのアルバム“BAND ON THE RUN”が出た時、ジャケット写真の中にポールといっしょに銀行強盗のような黒服の一群の一人としてジェームズ・コバーンを見つけたとき、僕は叫んでしまったです。コバーンがポールとおるっ!なんでっ!? その一味にはクリストファー・リー(ドラキュラ伯爵、この人も僕は好きだった)もいたような気がします。

 とにかく、中学生の僕にとって憧れだったビートルズと、ジェームズ・コバーンがなんで合流してるのかわからないままに、ただ、なんとなく自分が正しい道を歩んでるような誇らしい気分になったのを覚えています。

 「HELLO−GOODBYE」! 11月18日は僕にとって忘れられない日付になりそうです。

 ジェームズ・コバーン氏の冥福をお祈りします。

 寺門孝之

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