Today's Terapika寺門孝之です。

Back Number 20031017

 


 2∞3年1◎画津17日、神戸は晴れ。

 アトリエの小さなベランダに一匹、ハンミョウ(甲虫)が棲み付いていて、毎朝植物に水をやる際に見るとコンクリートの壁の片隅でぴょんぴょん跳び跳ねている。いつまでも去らない。ここで生まれたのかもしれない。このところまた「虫」憑いている。

 先日もアトリエでパソコン作業をしていると蝿がすぐ近くを飛んでうるさいので左手で軽く払ったところ、その左手の先に蝿はぴたりと取り付いてもじもじ顔を洗ったりしている。払っても飛ばない。仕方なく観察。猿のような顔をしていた。

 また別の日、食堂で定食を待つ間にチャバネゴキブリがやってきて、お手拭で払ったところお手拭に飛び乗って去らない。とてもいや。

 また別の日、中華料理を家族で食べに行き、最初に運ばれてきた玉子スープを飲もうと するやいなや、蝿がスープに着水。とてもいや。

 先週の12日日曜、てらこあマキズさんに誘われ伊勢=猿田彦神社の『おひらきまつり』へ行ってきたのですが、野焼きの火入れ式を見ようと御神田のへりに腰を下ろしたところ、僕のバッグに大きなイナゴが飛び乗ったまま離れず、細野晴臣&環太平洋モンゴロイドユニット転ずるところのMICA BOXのお神楽をアレンジした不思議な演奏と火入れ式の燃え上がる炎を一緒に鑑賞。

 この『おひらきまつり』、前にも何度かここで触れましたが、2∞1年に初めて行ってみておおいに感動。その時に僕に染み込んだ気配はその後の僕の絵にぢわぢわ影響を与えつづけてきました。昨年は予定が合わず伺えなかったのですが、今年は行けてまたまたよかったです!

 上に掲げた4枚の写真はそのときのもの。2∞1年の火入れではたちまちに豪火が立ち激しい火の粉と夜空の★が混ざってそれは荘厳な火景でしたが、今年はまず物凄い煙が真っ直ぐ天井へ立ち昇りました。もくもくもくもく〜〜〜! 大魔人とか現れそうな勢いの白煙の後、ようやくとめらめらと炎が。不思議な景色。

 その後、森山開次さんのダンス作品“ドロップス”が演じられ、僕は初めて森山開次さんを見たのですが、スバラシイ! すごい才能だなって思いました。思わず手元のノートに動きに見惚れつつデッサンにつぐデッサン。

 つづいて宮崎県の東米良銀鏡というところから来てくださった「銀鏡(しろみ)神楽」が奉納されました。このお神楽で、最初に「清山」という演目を舞われたかなり年配の舞い手の腰にひらひらと舞っていた白蝶がぴたりととまり、以後、舞い終わるまで微動だにせず舞い手といっしょに。舞い終わるとどこかへ行ってしまいました。その飄々とされた白いイメージの老舞い手に小さな小さな羽根が生えたようで、それも不思議な光景。

 当日の伊勢はあいにくの雨模様でしたが、おまつりの間だけは雨が止まっていて、お神楽が終わると途端にまた雨が緞帳のように降りて来ました。深夜、伊勢の町はふかいふかい白い霧に沈みこみ、数メートル先の人が見えないくらい。ところどころに灯る色とりどりの明りは夢のようにぼんやりして、武富士の電飾看板までが美しく竜宮城のよう。自分が誰かの夢の中を歩いているようでした。

 翌13日は起床すると大雨でがっかり。が朝食時に嘘のように晴れ上がり、伊勢神宮内宮へ参り、参堂で菓子を食べたりお茶を飲んだりしつつ、夕方、帰路につくため駅へ向かうとまた雨がレースのカーテンのように降りて来たのでした。

 伊勢から一路、京都へ向かい、誓願寺という神京極にあるお寺で開催される『十三夜』というイベントにシネマスタイリストをされているmicさんのお誘いで行ってきました。

 アートディレクターのセキユリヲさんや、イラストレーターの網中いづるさんが参加されているイベントで、大仏さんがど〜んと鎮座されてるお堂で映画あり、音楽あり、盆栽あり、イラスト、デザインありのにぎやかなかわいらしい夜会でした。若い女の子を中心に凄くたくさんの人が集まっていたのにちょっとびっくり。

 10月は「おまつり」の季節、色色な、新しいかたちでの「おまつり」があちらこちらで試みられているのだな、と思いました。「なにを見るか」だけではなく「なにを、どこで見るか」という気持ちが入ってきているのでしょうか?

 僕の勝手な定義では「まつり」とは、「正しい時に、正しい場所に、正しい人と集って、正しいことをすること」だと思います。

 かつて、人はもっと狭い範囲の小さな共同体の一員として暮らしていた頃は、その「正しい」ということがもっとわかりやすかったのでしょうが、現在、個人個人が切り離されて暮らしている僕たちは、なにが、いつが、だれが、なにをするのが「正しい」のかわかりづらくて、満足に「まつり」に属せなくなっていて、漠然と「まつり」したいとあこがれているかもしれません。

 その前の週、5日の日曜には家族で淡河(おうご)川という神戸の北の端にある川へ川遊びに出かけたのですが、たまたま「おまつり」に出くわしました。御輿(ミコシ)も出て、長老の天狗様は子供たちに菓子を配り、稚児さんもがんばって高い声を挙げていました。(下の3枚の写真がそのときのものです。)懐かしい村祭の光景が、意外と近くにもまだあるのでした。この先はどうなんだろう?

 さてと、明日、朝から吉野へ向かいます。丹生川上神社上社での、長屋和哉さんとの奉納生演奏+生描画…開演は夕方7時です。お近くの方はどうぞぜひ。昨年、「闇の妹」と「龍」の導きで出会った、長屋さんと丹生川上神社上社、今年はどんな夜が待っていてくれるでしょうか。わくわくします。

 そうそう、そうだった、楽市楽座の公演「アメリカンドリームと犬の生活」は本日初日だった! 大阪・中之島公園剣先広場に半透明の円い劇場=ラフレシアが出現しているはずです。開場夕方6時半、開演7時半。これは皆さんぜひとも行ってみてください! 明日明後日と3日間のみの公演です。(上のチラシ画像から楽市楽座HPへ行けます。)

 僕は毎日行きたいですが、明日の吉野が終わってから明後日山を降りてラフレシアに駆けつけるつもり。あ〜「まつり」がつづく。

 それから、ここ“てらぴかのえんがわ”のカウンターの「111111」はなんと高校時代の旧友が当てました。U谷君には記念の粗品をお送りします。少々お待ちを。

 久し振りに書いたら、長くなっちゃいました。では又。

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